コラム - 釣り(フィッシング)

釣り(フィッシング) - フライフィッシングとは何か?

フライフィッシングというものが生まれて200年以上になり、今では海、川を問わず世界中で楽しまれています。
最初にイギリスでフライフィッシングた誕生した当時、それは貴族の楽しみで、優雅でお洒落で、気品のある遊びでした。
それがアメリカに渡り、水生昆虫の研究、キャスティング技術の向上、あらゆる対象魚への実証が行われ、道具の発展と共に、一気に世界へと拡大しました。
多くの教書や雑誌の中で同じ擬似バリとしてのルアーとは違う、よりナチュラルな生命感を伴った動き、フォルムを活かしているのがフライフィッシングという理解が拡がっておりますが、特殊な釣りを除き、ルアーとフライでは魚に対してアピールする効果の決定的な違いがあります。

それが、視覚と音という問題です。肉食、雑食の対象魚の多くは、ルアーが発する波長によって最初に目標に対して興味を示し、最終的に視覚で確認をして捕食行動、攻撃行動をおこないます。
ところが、一部の止水や暗闇でのフライフィッシングの場合で音によって魚にアピールする場合もありますが、フライの場合、殆どは視覚効果を狙って、魚にアピールします。

特に流速の早い河川におけるフライフィッシングで、対象魚の動きを見ていると、瞬間的に捕食行動を行うかどうかの判断を行なっていることが分かります。
水生昆虫が豊富な河川であっても、それは同じで、数多ある水生昆虫の中で、自分が捕食対象とした餌を選別して捕食行動を起こすのですが、それを季節や時間帯によって、実に見事に選別しています。
これは胃の内容物を調べれば一目瞭然で、大抵は偏食した捕食を繰り返しています。

このような捕食行動は、魚食魚の場合も同様で、同じような大きさの捕食対象がいたとしても、ほぼどんな魚でも偏食傾向を見せます。
人間に個性があるように、魚たちにもそれぞれ個性があります。
大型に成長する個体は、より効率良く、成長が促進されるエサが何なのか、経験によって知っていると考えて間違い無いでしょう。
大型に成長する個体は、当然ながらエサをよりたくさん必要とするため、食餌のためのナワバリやより効率よく捕食が行えるようなその水域の中で最も有利な場所を押さえています。
釣り人はそれを経験で知っているので、ベテランほど大型の魚がいると推測される場所の検討がつきますので、技術の高い釣り人は大型を釣り上げる可能性が高いわけです。
問題は、魚の居場所が分かり、何を捕食しているかが分かっていても、使うフライがそれに合っていなければ、魚は見向きもしません。
その時に重要なのが、いかに魚に視覚で訴えるか?ということです。

人間の眼というものは、非常に高い性能を持っていますので、より緻密に、精密に、餌となる水生昆虫なり、小魚なりを観察することが出来ますが、釣りの対象魚となる魚たちは、魚眼という広い視野意外、人間ほどの性能は持っていません。
ほとんど、イメージで捕食対象を選別しています。
また、魚の場合は人間が持っていない側線という機関があり、これが第二の目の役割をはたしています。

話を元に戻すと、フライを水生昆虫に似せて作る場合、実は精密により生き物に近いリアルなフライを巻いても、それが必ずしも魚たちには選ばれない、つまり釣れるフライではないということです。
長年、フライフィッシングを楽しんでいるベテランは、その点をよく心得ていて、人間が見て釣れそうなフライと、実際に釣れるフライは違うことをよく知っています。逆に言えば、魚が興味を示すフライは何をポイントにして巻けば良いか?を知っているということです。
それは、①光、②色、③形状に集約されます。

①光
魚は魚眼という独特の視野で、常に上を意識しています。
下から上を見ているということは常に捕食対象は影の状態で見えているということです。
そして、外光は水面の屈折率により、実際には斜めの状態で魚眼に到達するため、捕食対象の色調は真っ黒な影ではなく、エサの色調を含んだシルエットになって魚には見えています。
水面に浮いているのに、色が変われば魚が食べないというのがそれに当たります。

②色
生物学上、魚は色を見分けることが出来ないと言われていますが、ほとんどの釣り人のはそれを信じていません。私もその一人です。
特にフライフィッシングのように小さな擬似バリを使用していればそれは本当によく分かります。
マッチの先や米粒程度の大きさのフライであっても、色がマッチしなければ魚が食ってこないということを何度も経験しています。
魚は、人間とは別の見え方で色を識別していると考えて間違いありません。

③形状
そうは言っても、やはり魚が最初に捕食対象とするか否か?の判断は、その形状によるところは間違い無いでしょう。
魚食魚をフライで釣る場合でも、長さが合っていてもシルエットや形状が違うと魚は見向きもしません。
前述のように、魚は捕食行動を行う場合、偏食傾向を示す場合が多く、その時のエサにマッチした形状のフライを使うことは必須だと考えられます。

結論は、フライフィッシングとは、ルアー以上に魚の捕食行動にマッチさせた釣りであるということと、その点をよく理解した釣り方、フライの選択が重要であるということで、この違いをより理解しないと、ルアーからフライに転向したとしても、釣れないと嘆いてルアーに戻ってしまうということになります。